導入企業も多いフレックスタイム制とは?メリット・デメリットを中心にわかりやすく解説!

導入企業も多いフレックスタイム制とは?メリット・デメリットを中心にわかりやすく解説!

今や多くの企業に導入されているフレックスタイム制ですが、なかには、まだ未導入であったり、検討段階であったりする企業もあることでしょう。フレックスタイム制やテレワークを使った柔軟な働き方は、従業員のワークライフバランスを実現する働き方改革の手段として、国からも強く採用が求められています。今回はフレックスタイム制度の概要から仕組み、そのメリットや導入のポイントまでを解説していきます。

フレックスタイム制とは?

フレックスタイム制とは、事前に決められた清算期間(通常は1カ月)と総労働時間の範囲内で、始業や終業の時間を従業員が自由に決められる制度です。総労働時間は160時間(1日8時間×稼働日数20日間)とされていることが多く、総労働時間を超えて働けば残業となります。通常の労働時間制度とフレックスタイム制のイメージは、以下の図をご覧ください。

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※厚生労働省発行「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」より引用

必ず勤務しなければいけない時間帯が決められている通常の労働時間制度に比べ、フレックスタイム制は自ら働く時間帯を決められる「フレキシブルタイム」が設定されています。従業員はこのフレキシブルタイムを上手にプラス・マイナスし、総労働時間の範囲内で業務を遂行していくのです。仮に業務が多く、勤務時間が総労働時間を超えてしまった場合は、超過分だけ残業として扱われます。また上記の図にはフレックスタイム制にもコアタイムと呼ばれる、必ず勤務しなければならない時間帯が設定されていますが、コアタイムをあえて設定しない「スーパーフレックスタイム制」を導入している企業もあります。

フレックスタイム制は9時から5時までのように勤務時間が固定されていないため、 従業員の裁量(都合)で働くことができます。このような柔軟な働き方は、ワークライフバランスの実現に大きく寄与すると言われています。

導入の効果

では実際にフレックスタイム制を導入した企業では、どのような効果が出ているのでしょうか。

➢ 社員の健康状態が良好に

合成ゴムや合成樹脂など石油化学製品の製造を行っているA社では、仕事の効率化を目的としてまず研究開発部門にフレックスタイム制を導入しました。その数年後には、本社と支店へ全社的にフレックスタイム制を導入したところ、社員の身体面・精神面での健康増進効果が大きくなったと報告されています。

また同社では、導入にあたりまずは試行期間を3カ月設け、制度が十分に活用できるかどうかの調査を行いました。試行期間中に生じた疑問や問題点を洗い出し、必要なルール決めをしたことで、社内の理解を得ながら導入することができたようです。

➢ 公私にバランスの取れた生活を実現

介護事業、出版事業、教育関連事業などを幅広く展開するB社は、創造性を発揮した生産性向上を目的としてコアタイムなしのスーパーフレックス制を導入。制度趣旨を周知したうえで、仕事量の配分をすべて個人の裁量に委ねました。結果としてこの施策は自己管理能力と仕事に関わる計画性の向上につながり、従業員は公私でバランスの取れた生活を実現できています。

スーパーフレックス制の導入にあたり、同社は管理層のマネジメントにも留意しました。従業員に裁量を与える一方で、業務量が偏っていないかの管理、休日労働や社外での業務など見えにくい業務の把握などを強化したのです。従業員の自己管理・業務管理能力が向上したのも、管理層の細やかなマネジメントがあってこそといえるでしょう。

フレックスタイム制のメリット・デメリット

フレックスタイム制に効果があることはわかりましたが、デメリットはないのでしょうか。企業側と従業員に分けて、そのメリットとデメリットは以下の通りです。

企業側のメリット

➢ 業務効率や生産性の向上

業務量の少ない日は早めに帰り、多い日はしっかり働くなど、時間の有効活用による業務効率や生産性の向上が期待できます。

➢ 優秀な人材の確保

フレックスタイム制の導入は、リクルートへのアピール効果もあります。働き方改革やワークライフバランスの実現に積極的な企業であるという事実は、優秀な人材の確保につながります。

➢ エンゲージメントの向上

働き方改革の推進や柔軟性のある働き方を認めることで、エンゲージメントの向上が見込めます。企業と従業員の結びつきが強くなることにより離職率の低下も期待できるでしょう。

企業側のデメリット

➢ 自己管理のできない従業員が存在する

労働時間の自己管理ができない従業員は、どうしても一定数存在するものです。午前中には出社できない、業務が夜型になってしまう、などの状況は体調への影響も懸念されます。従業員の体調に変化を生じたときに、すぐに気が付けるよう定期的な健康調査やヒアリングを実行するといいでしょう。また体調の変化や不安がある場合は、産業医への相談を促すことで体調悪化の抑制につながります。

➢ 社内外のコミュニケーション不足

フレックスタイム制を導入していない顧客や、社内の他部署とのコミュニケーションが不足してしまう懸念があります。コアタイムの設定や昼礼の導入、情報共有ツールの活用など、コミュニケーション不足を補う対策を行いましょう。

➢ 光熱費のコスト増

通常の労働時間より長くフレキシブルタイムを設定することになるので、朝早く出勤する従業員と夜遅く退社する従業員が混在することになります。必然的に会社に従業員がいる時間が長くなり、光熱費のコストが増える傾向になります。

➢ 労務管理の複雑化

フレックスタイム制の導入により、労務管理が複雑化したり、急な業務依頼が難しくなったりするなど、マネジメント面での難易度が増すことになります。対策として労務管理システムや情報共有ツールを導入することで、マネジメントの強化を図ることが必要です。

従業員側のメリット

➢ 通勤のストレス軽減

フレックスタイムを使って時差通勤をすることにより、朝夕のラッシュを避けるなど柔軟な通勤方法が可能になります。余裕のある通勤は、心身共にストレスの軽減につながります。

➢ 子育てや介護への対応

幼稚園や保育園への送り迎えやデイサービスへの送迎など、子育てや介護に対応しやすくなります。テレワークなどと合わせてフレックスタイムを使えば、今までは離職せざるを得なかった状況でも仕事を継続できます。

➢ ワークライフバランスの実現

仕事とプライベートの時間を主体的に使い分けることにより、ワークライフバランスを実現することができます。

従業員側のデメリット

➢ 勤務時間を完全に自由にできるわけではない

コアタイムや会議が設定されている場合がありますし、同僚や他部署との調整が必要になることもありますので、完全に個々の従業員の都合だけで勤務時間を自由にできるわけではありません。

➢ 顧客等とのコミュニケーションが難しくなる場合がある

一般的な勤務時間(たとえば朝9時から夕方5時まで)で働くことが減ると、顧客とのコミュニケーションが難しくなる場合があります。たとえば顧客の会社でフレックスタイム制を導入していない場合、朝や夕方に送られたメールに返信することが遅れる、もしくは翌日になってしまうような事象が発生しやすくなります。このような場合にはメールの自動応答システムなどを使って、顧客に対する配慮が必要になるでしょう。

また社内の事情によっては、業務の都合上フレックスタイム制を導入できない他部署との意思疎通が難しくなることも考えられます。

➢ 労働時間の自己管理が難しい

フレックスタイム制は、業務時間の管理を従業員に任せる自由な働き方です。それだけに時間の自己管理ができないと、月の後半にしわ寄せが来てしまうことや月の労働時間が足りなくなるなどの問題が発生します。自己の裁量に業務時間の管理が委ねられるということは、相応の責任が発生するのだということも周知しておかなければなりません。

フレックスタイム制導入時のポイント

最後に、フレックスタイム制を導入する場合のポイントや注意点を解説しておきましょう。

就業規則への明記と説明

不明確な運用を避けるためにも就業規則にフレックスタイム制の導入を明記します。また、事前に従業員への通知と十分な説明を行いましょう。総労働時間(所定労働時間)や1日の標準労働時間、コアタイムなどについても早い段階で説明会を行って理解を深めてもらい、運用の初期段階で混乱しないように周知を徹底します。

労使協議の開催

ほとんどの場合、経営者や役職者はフレックスタイム制の対象にはなりません。あらかじめ対象となる従業員を明確に定め、労使協議を行います。労使協議では運用の条件を明確にし、運用開始後にトラブルとならないよう、労使協定書を作成しておきましょう。

清算期間を明確にする

以前は1カ月であったフレックスタイムの清算期間が、2019年4月以降は上限が3カ月になりました。このため自社ではどれくらいの清算期間を採用するのか、起算日と清算期間を明確にし、労使協定に記載する必要があります。たとえば清算期間を3カ月とした場合、単に3カ月と記載するのではなく「4月、7月、10月、1月の1日から翌々月の月末まで」などと明確に記載する必要があります。この清算期間が記載された労使協定書は、管轄の労働基準監督署へ届け出ることが義務づけられています。

フレックスタイム制は従業員・企業双方に大きなメリットがある

今回はフレックスタイム制のメリットとデメリットを従業員側と企業側に分けて整理しましたが、フレックスタイム制の導入には、双方に大きなメリットがあります。人材の不足が深刻化するなか、ワークライフバランスを実現させて優秀な人材を確保することは、企業にとって何より必要なことでしょう。ただし、注意点もありますし、従業員側の理解も得なければ効果を得ることは難しいでしょう。導入にあたっては、労使がよく協議の上、効率的な運用を心がけることが重要です。