経費削減は、経理部主導によるITツールの活用で電子化を優先

経費削減というと、企業のトップや経理部の長が社員に向かって無駄な経費を抑えるよう指導し、申請書や伝票を厳密にチェックすることなどと考えるのが一般的。しかし、これらの管理ルールや指導による経費削減は、はるか昔から実施されてきたはずです。

よりいっそうの経費削減を目指すのならば、新しい考え方や手法を導入するのがひとつの方法です。その手順やツールなどについて見てみましょう。

経費の見える化を最初に

まず、経費の棚卸から始めましょう。これにより、全体像を見ることができ、経費項目が漏れなくリストアップできます。

全社の経費を細分化

企業努力の集大成である売上高から、それに費やされた費用の総体を引くと利益が出ます。これは、企業活動の結果であり、成績表でもあります。しかし、ここで対前年度比、対前年度同月比に一喜一憂したり、経費を下げようと声高にしたりしても、その中身が見えないと手の打ちようがありません。

経費データはITシステムに登録されていることがほとんどであるため、それらを「費目」や「期間」、さらに「部署」別などに集計してみると良いでしょう。プロジェクト単位や個人単位にまでブレークダウンすることを検討してください。
これらを時系列で、各データがどのような推移をしているのかを追ってみましょう。そのためには、経理システムがそのような分析に使えることが前提であり、経理データをCSVデータなどで出力し、別の分析ソフトで集計できるような体制が望まれます。

例えば経費データから、年々採用コストが増えているとわかれば離職率はどうか、採用活動はうまくいっているか調査し、対策・改善するなどコスト削減の手が打てます。さまざまな要因が影響するため、昨年度との比較ではなく、5年以上の流れで見たいですね。
過去データを見る仕組みがない場合には、3年後や5年後の効果を考えて導入を検討すべきでしょう。

不明な経費のコスト算出

続いて考えたいのが、可能な限りコストに関わる行動を数値化してみること。社内会議や企画書の作成、営業活動やサービス活動のコストを算出します。多くが人件費となるため、社員のコストの単価とその所要時間、目的別に分けて、仮の数値でもいいので算定してみるといいでしょう。

近年は、ジョブ単位で開始と終了の時間を登録し、社員がどの業務にどれだけ時間を費やしたかが分かる勤怠管理システムが、クラウドサービスで利用できるようになりました。それらのデータは給与計算とのリンクも可能です。データ化されれば、社員個人もワークスタイルを客観的に見られ、自然と改善意識も芽生えてきます。

すぐ削るべきコストと検討すべきコスト

売り上げが増えれば経費も増えます。一概に経費が増えることのすべてが悪ではありません。先行投資はその代表例で、将来のリターンを見越したコスト評価にする必要があります。

売り上げとの関係性

適正なコストは売り上げの伸長や利益の拡大に貢献していたり、連動したりしているもの。業容が拡大すればオフィスが大きくなり、家賃コストが上昇します。営業活動が広域になれば、交通費や出張費が増加するでしょう。仕事が忙しくなれば残業代が増えることもあります。それらの経費が正しく売上高などの推移と相関があるか考えなければなりません。
一律のコスト削減施策は企業の成長の妨げになることがあります。基本的なことですが、経費の伸長率ではなく、売上高に占める経費の比率で把握することが重要。仮にその割合が上昇しても、新規営業の開拓期などに当たれば活動力が高まっている証かもしれません。社員1人当たりの売上高の推移は効率性や生産性の指標となるので、比較数値として活用できます。これらのデータが蓄積され、分析者の経験が積まれると、数値を指標にした経営判断ができるようになるでしょう。

経費削減のさらなる可能性を模索、思い切った改革も

細かく経費項目をリストアップし、それぞれについて経費削減の方法を探るのも効果的です。例えば、次のような費目と検討したい経費削減策があります。

  • 交通費:テレワークの採用
  • 外注費・人件費:アウトソーシング請負会社やフリーランサーの利用、内製化による外注費削減
  • 不動産賃料等の固定費:部署の統合、フリーアドレス化、テレワークの採用
  • 会議や打ち合わせコスト:Web会議の導入

これらはどれも、残業代削減や無駄な訪問営業削減といった従来のコスト削減方法ではなく、会社にとって大きな改革となります。業務の効率化推進やコストの大幅削減には、思い切った改革が必要な時代になってきたといえるでしょう。

将来を見越しての電子化や自動化

テレワークやWeb会議などはICTの力によるもの。業務を見直しつつ同時に電子化を進めることで、業務の「見える化」や「自動化」などの下準備ができます。

必ず着手しておきたいコスト削減の内容

電子化前に削減すべきところは削減してしまう方が得策。無駄な会議を減らさないまま電子化・自動化に移行しては、コスト削減や効率化の効果は薄れるでしょう。削減すべきものは次のようなものが該当します。

  • ペーパーレス:紙そのものの印字コストや保管コスト、社員の文書作成や文書探索コスト
  • 現金レス(小口伝票廃止):クレジットカードや電子マネーなどの利用による小口伝票、現金管理の廃止
  • 経費等の自動精算:スマホなどで撮影した領収証からも数値化し、経費申請・会計システムと連動させる

経費精算は鉛筆1本の購入、ひと駅の移動もその対象。交通費は活動すればするほど、その精算作業が面倒になります。さらに、出張が多い場合は事前の申請書の提出と決裁、旅費の仮払い、出張後の精算と事務処理が続きます。「移動しているか精算書類を記入している」ような状態になることもあるでしょう。

しかし、こうした経費精算もITで簡単で正確な処理ができるようになりました。経費精算システムを使えば、定期券区間を自動で控除したり、立て替え金はICカードと連動して精算できたり、伝票等をスキャンして入力が省けるなど、便利で事務作業の効率化につながる機能が豊富にあります。

全体最適化や自動化への挑戦

最後に、これまでご紹介してきたツールやシステムの更に先をゆく、ITを活用した手法として、次の2つをご紹介します。

ERPの導入 

ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)は、ひと言でいえば、営業、サービス、流通、人事などの動きを一元管理するシステムです。全社が最適に活動しているか管理し、製品工程の無駄を把握したり、人材配置の偏りを是正したりできます。結果ボトルネックがなくなり、最適な商品やサービスの提供ができるようになります。
各自の努力で業務の改善が進んでも、会社全体の仕事の流れに無駄や不適切な箇所があると、結局効果が100%発揮できないことがあります。それを改善し最適化するためのシステムがERPです。会社の動きに無駄がなくなることで、トータルで見たコスト削減という捉え方ができるでしょう。

RPAの導入

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)はソフトウェアのロボットといわれています。ロボットといっても生産現場にあるようなものではなく、バックオフィス業務などを認知機能搭載のロボットが代行し、自動化や効率化を図ることです。伝票の自動読み取りと判断、適正なデータの切り分けとデータベースへの落とし込みなど、コンピューター処理を連続させて事務処理のルーチンワークを自動化します。
これまで複数の事務スタッフで行ったり、外注したりしていた業務も人の手をほとんど介さず処理できるようになる可能性があります。24時間稼働でき、もちろんヒューマンエラーがありません。業務の正確さとスピードアップが図れ、人件費を削減できるという一石三鳥の効果があります。

見える化や自動化のための電子化

企業が電子化を進めるとなれば、システムの構築はIT部門が行うでしょうが、どの業務をどのように自動化するかは、現場の担当者の指示がないと実現しません。経費を詳細に、かつ戦略的に把握するのも電子化、それを自動化するのも電子化が前提です。経費の全体像を把握できるのが経理部門の強みです。コストに関する改革やIT化については、経理部門が主導する時代であるといえるかもしれません。

おすすめの業務効率化ツール

社内業務の効率化には、「経費精算システム」や「ワークフローシステム」がおすすめです。特にスマートフォン対応のシステムは外出先からの作業が可能になるので、人気が高まっています